なめこの倉庫

自転車をぐふって受けとめる、川に就職した人に話をきく、泣ける広島県をディスるなど。

【体験日記】結局ワークライフバランスってなんなんって思った話

 

 

去年、名前からしていかにもな、ワークライフ・コラボさんの学生向け活動に参加しました。ざっくりいうと、自分の将来設計は「仕事」だけよりも「結婚×仕事×子育て」で考えよう体験だとか、実際にぴちぴちの子どもと触れ合ってみよう体験とかしてました。

 

ワークライフ・コラボさんは、松山市内にあるNPO法人で、「ワークライフバランスを実現し、愛媛をもっと元気にすること」「ていうか、単純に仕事も生活も楽しむこと」を掲げて、日々活動されています。活動範囲が幅広く、個人から企業向けのコンサル的なのまでありますが、その中でも「学生」をつかまえてワークライフバランスを考えてもらうんじゃ!というのが、私が参加していた所でした。


私以外にも参加している学生はちらほらいて、おおよそ分類すると、「就活をふまえ、企業を知りたくている」「自分もいつか結婚するかもしれないから、子育てを知っておきたくている」「今後結婚する気まんまんである」「すぐに結婚する気まんまんである」「巻きこまれた」になると思うのですが、まあそれぞれ気づきはたくさんあったと思います。

 

わたしもしょせん学生で、「結婚する/しない?わたしは、する!」というすごい理由で訪れるのですが、意外なおまけがぽろぽろ落ちていました。

 

 


  * * * 

 


子育て体験というものがありました。4才くらいのお子さんを持つ家に突撃して、実際子育てどんな感じなんすか?大変すか?君、なにが好きなん?恐竜好きなん?かっこいいね!きもいけど!とか、子育てを目で見て耳で聞いて、肌で感じます。4才のやんちゃ具合を知り、やんちゃ具合に対応して生きていくご両親の暮らしぶりを知ります。

私が想像していたのは、そこで終わりです。「あー、子育てを生で感じられて、良かった!」。


その後、その親御さんと、連絡手段として使っていたSNSでつながります。これは運なんだろうけど、その方は日々の家庭の様子を日記みたいに載せることが多く、自然と見るはめになります。「あ、お子さん、この年で恋したの」「お父さん、家での役割は息子さんと遊ぶことだとか言ってたけど、こういうことか。プロレス激しすぎる」など思うようになります。

 

日を重ねるごとに、以前こうだったお子さんがいつの間にかこうなっている、ふと気づいたら成長している、発言がまるっきり変わってきている。そういう事実が入ってきました。決して1回きりの子育て訪問では見えない部分でありました。こうして点と点がつながって、線になりました。

 


しかも載せるのは家庭のことだけでなく、仕事のことも盛りだくさんでした。今日の仕事はこうだとか、この時期はこうなんだとか、今日は保育園とそのあと会社に行くだとか、その方もういい大人なんですけど明日は緊張するだとか、いっぱいありました。ふーんと思いながら見ていました。

家庭のことも載せるし、そのスキマをみて仕事のことも載せているし、"2つとも載せる"人なんだなあ、と思っていました。家のこと・プライベートのことをつぶやき、次は仕事のことをつぶやき、まあなんてうまいこと両立してるんだろう、と。さすが、子育てのすばらしさを広めるのにふさわしい人であると。「ワークライフバランス」を考えるにうってつけであるなと。

 

 

そんなある日、就活で大きな合同説明会に参加したのですが、そこでバッタリお会いしました。その日のその人は、会社の制服をバッチリ着こなし、採用担当者としてブースに居座って、その企業を代表する顔でそこにいました。

 

私はその人を「子育て体験の訪問先だった家」としか見ていなかったため、その姿に衝撃をうけました。写真では(例のSNSで)何回も見ていたし、てか子育て体験よろしくお願いしますの初めましても制服でしたが、こう、現実でまのあたりにすると、「あ、この人、仕事してる女性なんだった」という実感がわきました。子育て楽しい~大変だけどやりがいが~松山市の保育園はね~とか言ってたあの人はどこ? バリバリのキャリアウーマンやないか。

 

その日から、その人の投稿を注意深く見るようになりました。仕事のつぶやきをよく読み込むと、スルーしてたけどひょっとして濃い内容ばっかじゃんと気づきました。事務職とはなにか?をひたすら書いた投稿や、仕事で得た気づきや変化、もっと努力しようと思った出来事、たくさん書いてありました。

 

 

そうして、そのうちふと、気づきます。「あっ。わざわざ"2つを載せてる"わけではないんだ。子育ても仕事もあって、それがこの人の生活なだけか。」

わたしが勝手に「子育て」部分を欲深く見ていただけであって、仕事に対するプロの姿勢を、はねのけていたのでした。

その人は、家庭だ、仕事だといって、わざわざ切り取って編集していたわけではなくて、ただ自分を自分のままさらけ出していただけなのでした。つまり、ほかの人と同じ、普通の投稿をしている、普通の人なのでした。1の大きさの人間の生き方を1で伝えていただけの話なのでした。

 

 

ワークライフバランスって叫ばれてる昨今、その言葉にちょっと新しさを感じてウキウキして、仕事も大事だけど結婚結構大事!子育て万歳!これからは子育て重視の人が勝つう!と勝手に変な解釈をしてたのですが、べつにそんなことはなかったのでした。

 

いや、表面だけ見れば100%正解ですが、その下に隠れている「ひとりの人としての生き方」を追求する姿勢、自分と相性のいい生き方を問い続け切磋琢磨する姿勢を、わたしは見れていなかったのでした。「本当のワークライフバランス」ってなんだろう。理想の裏にある現実や、裏付けの根拠ってなんだろう、と考えるようになりました。

 

視点が一段だけ高いところへ移り、癖の記事サーフィンにも変化があらわれました。以前は「子育てって大切!」「社長がみずから育休をとってるサイボウズさん最高!」みたいな記事をぼーっと追っていただけでしたが、今は、たとえば「 サイボウズが産休・育休制度を充実させた理由 - ログミー 」のような、ワークライフバランスを考えるべき理由を客観的にとりあげている記事も追うようになりました。

 

 

こうして、線と線が積み重なって、立体になっていきました。

 

 

  * * *

 


「赤ちゃんを抱っこしてみましょう」を実際に経験できることが、この学生向けプロジェクトの第1の効果だったとします。その後のふとしたつながりから余韻として得られた、家庭の深いところを覗けたこと、子育ての様子を点+点→線で追って見学できたことは、第2の効果になると思います。そして、時間と労力の詰まったその子育てですら、その人の全力人生の一部に過ぎないという事実を知れたことが、第3の効果になると思います。まるで波紋のようだ。

 

もちろんきっかけの全てがワーコラさんだったわけでなく、他での体験や私生活の場も重なったことで、こういう結果になりました。 

効果が効果を呼び、最初のちいさな体験がしだいに厚みを持っていく。わたしの場合は特に、最初の思い込みが激しかったため、厚みの増し方は加速度的でした。

 

ワーコラさんがどこまで狙ったのかは分からないけれど、説明文にはのっていない、見えないところで、いい副作用が働いてるんじゃないかと思いました。うーん、本意とは3kmくらい外れたところに転がってしまった副作用かもしれないが、とりあえず副作用なので副作用でした。

 

 

 

もっと言えば、これさえおまけの一つに過ぎないと見なし、さらに上空の鳥の目から見ることもできます。結婚だ子育てだ言ってうるさいけれど、生き方の自由を考えるならば、結婚しても子どもをうまない選択肢もありだし、結婚しない人生だってありです。間口はたくさんある世の中だったんだ、ということを考えるようになりました。自分の将来に、「結婚」の可能性を置いてみたからこそ出てきた結果であります。「結婚する/しない」のコマを置いてみない限り、「結婚する」はもちろん、「結婚しない」の選択肢も出てこないんですもの。

 

仕事も、結婚も、子育ても、自分はなにを選びたくて、どう生きていきたいのか。先輩方を見て、各々が選択の勇気を持つことの大切さを、最近、見直しはじめています。

 

 

(写真:活動のシメである年度末の交流会で、社会人スタッフが、みんなにバレンタインのチョコを配ってくれたもの。おいしくて泣きました。ありがとうございました。背景は、大人に「この半年で見えてきたお互いのいいところを書きな!」と紙を渡され、もくもくと書き続ける学生スタッフの様子。)

 


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■そんな人たちが、今年も新たに、学生に罠をしかけているそうです。6月21日(日)のお昼から、新・ライフデザイン公開講座が開催されます。単なる講演会なので、どっぷりとした深みはないですが、ここ1年の就活しか考えないんじゃなくて5年10年後も見すえてる人、知らない価値観に触れたい人、別になにもない人におすすめです。ぜひ、厚みのきっかけをつくってね。

ちなみにファザーリング・ジャパンの安藤さんもくるってよ。

 

 

(画像はHPより)

 

 


以上、そこらへんにいる大学生の感想です。


ひとりでも多くの人が、自分の信念をもって人生を選択できる社会よ、カモン。

それじゃあ、まずは、わたしから。

 

 

 

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