「ぐふっ」でまちを幸せにしてみる―デザイン×まちづくり
■ 駐輪場を工夫したらいいんじゃないか問題
この春に、こんなチラシをどこかで拾い、なんかかっこいいなあと惹きつけられました。
(画像はHPより)
見てみると、松山ビジネスカレッジさん(みかん県にある専門学校)の、展示会のお知らせ。簡単に言うと、「デザインの専門学校生がデザインの力でまちを良くしようと考えてみたよプロジェクトの発表会」となります。
あーよくあるやつかなあと思って見にいったのですが、その会場で、「城山公園をデザインの力で良くしよう」みたいなアイディアが冊子にまとめられており、その1ページにこんなものがありました。
城山公園とは、愛媛県の市内のど真ん中にある、大きな公園です。
そこの駐輪場のデザインをこんなふうに変えたら、駐輪に関わる問題も改善されるのではないか、というものでした。たとえばたぶん、放置自転車とか。
そこの先生が解説で「これとかね、自転車とめるときに、ぐふって言ったりとかね」とおっしゃってて、なんて幸せなんだと思いました。
■ぐふっの回数は少なめにしたらいんじゃないか
ただ、思ったのですが、最初のうちはきっと楽しいですが、慣れてくると毎度とめるたび「ぐふっ」って言われるのは、いらいらする人もきっと出てくると思うんです。遅刻して焦っているときに、のんきに「ぐふっ」って言われても、ちょっとぶちきれそうになります。余計に駐輪場を避けてしまいかねません。
そこで、ランダムで数回に1回「ぐふっ」って言ってもらえるのがいいなと思いました。
そうすると、一人でとめる時もほどよく楽しいですし、近くでとめてる人とたまたま同じタイミングで 「「ぐふっ」」 って鳴ると、ちょっとほほえんでしまうんではないでしょうか。そのうちどこかの結婚式のスピーチで、「新郎新婦、運命の出逢いは駐輪でぐふっを重ねたことでございます」とか、言われてるかもしれない。
これは公園に限らない話で、むしろまちなかの方が需要があります。友達や恋人と一緒に、買い物ランチ飲み会など、訪れる機会がたくさんあると思うんです。
人って不思議なもので、大人数であればあるほど、赤信号いっしょに渡ればこわくないので、一緒になってそこらへんに適当に停めてしまうこともあります。駐輪禁止の看板があっても、堂々と…。
そこがたとえば、「同時にぐふって言わせると3時間無料」みたいになれば、無料をダシに「ちょっと停めてみようやw」って言えるし、複数でいればいるほどツレを駐輪場に誘いやすくなるし、集団の放置自転車も防げるんじゃないかと思います。
それで、このぐふっを東京などの過密地に売り込めば、都会も放置自転車とか少なくなってうれしいですし、愛媛もマニーが入ってうるおうしで、win-winなのではないかと思いました。東京だけじゃない、京都も大阪も、となりのうどん県だって、どこも自転車問題には困っています。いざ、全国展開。
新しい物事は常に、都会から地方へと流れてきます。たまには地方からアイディアの風を吹かせるのも、ありなのでは。
■ 展示会からみえた「デザイン」のちから
ぐふっを考え出すと止まらないですが、展示会がそれだけだったわけでは決してないので、他にどんな作品が置いてあったか、紹介しておこうと思います。
① ロゴ
みかん県の首都・松山市は、中心市街地が一番町、二番町…と数字で区切られています。
そのなかでも注目度の低い「一番町」を取りあげ、自分らの手で活性化してやろうの取り組み。イチバンチョウにならぶお店たちの看板ロゴを考え、スマホのサイト画面でもロゴから直感的に店選びを行う、という提案です。
少し大きな話になりますが、地方は「素材はいいが、洗練されていない」といわれます。食べ物も道具も、材料や質は抜群にいいけれど、それが加工されて人前に出るときの姿は、必ずしも「いい」とは言えないのかも。
ロゴなどのデザインをつくりだす・改良することは、洗練のひとつの方法なのだと思います。
ちなみに、愛媛県のいい素材を徹底的に洗練させた例として、わたしは大藪さん率いるエイトワンさんが一番に挙がると思っています。
今治タオルの「伊織」もそうですし、「10(TEN)」なんかは、みかんひとつでよくここまでできるなとあきれるほどに。
(画像は10さんHPより)
② 手
こんな作品も。右奥の大きな手です。
まちを背景に、まちの写真でつくられた大きな手が、こちらに向けられています。
紹介文がこちら。
「 私たちは町を制して、町に支配されている。」
この文章は、見つけた瞬間にとりこになりました。まちをつくり、まちづくりを行い、まちは人間の支配対象であると思っている私たちですが、実は私たち "が" まちに生かされていた、というもの。
人とまちの生き様を、人をこえた視点から捉えていて、ぐふっの次に好きな展示物でした。もっと言うと、展示物そのものよりは、この紹介文のが好きです。(すみません)
③ アンモナイト君
どこの県にも「県庁」なるものがあります。愛媛県庁は、すばらしい建物を持つにも関わらず、観光客はわりと少ないんだとか。
そこで松山ビジネスカレッジさんは、「材料」に目をつけました。歴史ある建物なせいで、大理石の床にアンモナイトの化石がいっぱい見られるのですが、それをマスコットにしてしまったそう。
アンモナイトくんを作りましたで終わりではなく、それを使った県庁グッズも展示されていました。アンモナイトくんファイル、アンモナイトくん便箋、アンモナイ(略
しかもグッズのひとつひとつがしっかりした作りだったので、びっくりして「よく作りましたよね、こんなの」って言ってしまったのですが、やるからにはとことんこだわったそうな。
もはやデザインの域をこえて、ひとつのブランディング。 はじめはきもかったんですけど、今はかわいらしいマスコットです。県庁さん、拾ってくれないかな。
■そんなきもかわマスコットまで作り上げる、松山ビジネスカレッジさんのデザイン部門はこちら。
公式ホームページもあります。デザインだけじゃなかったんや。
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デザインの知識は皆無な私ですが、 皆無と分かっているからには常にアンテナをはって、デザインの種を仕入れるようにしています。仕入れたものから芽を出させて、日々妄想を楽しむ今日このころ。
文章は「こうすればいいのに」の想いをさらけ出すための手段ですが、そのアイディア自体は結構そこらへんにころがっているんだなと、再確認いたしました。
では、いずれ近くの駐輪場でお会いしましょう。
まちじゅうに、ぐふっが溢れることを願って。