なめこの倉庫

自転車をぐふって受けとめる、川に就職した人に話をきく、泣ける広島県をディスるなど。

川に就職した先輩にいろいろ聞いてみる 【1/3】

  f:id:neimuko:20150531183841j:plain

 

知り合いにまつさんという人がいるのですが、この春にたまたま会ったとき、

「よっ、なめこ。俺、高知県のアウトドア会社で働くから」
「へー。なにするんですか?」
「なんか川にもぐったり山登ったりする。お客さんと」

と言われ、よく分からなさすぎて面白そうだったので、詳しく聞いてみることにしました。

 

■まつさんの経歴をざっくり言うと

f:id:neimuko:20150531174046p:plain

まつたけ。なめこの先輩にあたる。

みかん県でうまれる
   ↓
みかん県の大学にいく
   ↓
ひきこもる
   ↓
高知の川に就職(2015年春~)

 

 

■ つまり何をしているのか

 

仕事内容はどうやら、ラフティングというスポーツに関わるものだそう。ラフティングとは、

専用の大型ゴムボートに乗り仲間と力を合わせて激流を漕ぎ下っていくスポーツです。 「筏(いかだ)」の英訳「raft(ラフト)」からこのスポーツは命名されました。( http://www.nnraft.com/rafting/ )

だそうで、都会から癒しを求めてきた人々に川下りや山登りの場を提供する、そんな会社で働いているとのこと。

 

なめこ: で、具体的に何をしてるんですか?

 

まつ: 主にトレーニングしてます。しかも、まだ寒い3月から。7メートルくらいの高さから川に飛び込んだりしています。ここのちょっと下くらいかな。(対談場所がカフェの2F)

 

お客さんも皆そこから飛び込むんだけど、川なので、流されたら助けにいかなきゃいけないし、何かあったときは、飛び込まなきゃいけない。だから鍛えなきゃいけないんだけど、俺、流されっぱなしなんだよ。

 

なめこ: へー(笑う)

 

まつ: ツアーでお客さんに同乗させてもらったんだけど、俺が一番流れてる。

 

なめこ: (すごく笑う)

 

まつ: 道具も古いの渡されて、前のスタッフが使ってたジャケットを。お客さんは当然いいの着てるじゃん、俺の古いから、俺だけ流されるんやもん。皆は落ちてもすぐボートに登ってる。水も冷たいし、川の流れも早くて、俺だけ流されてさ。水も飲んじゃう。

 

なめこ: ハードですね。やめたいって思わないんですか。

 

まつ: 水飲んだときとか、辞めたい以外のなにもないです。

 

なめこ: 一日に何回くらい水飲むんですか?

 

まつ: 数え切れません。腕もぱんぱんになるし。ボートも重いし。俺の体がまだできてないのもあるけどね。膝痛めてるし、中耳炎にもなるし…どこからでも入ってくるからね、水。

 

なめこ: 治ってもまたなるかも(中耳炎)って、不安にならないんですか?

 

まつ: それこそ、不安をあげればキリがないよ。またなるかもしれないし、膝もそう、身体もできあがってない。マイナス要素をあげればキリがない。

 

だから、逆に、ポジティブに考えるしかない。たとえば、今膝が痛くて靭帯を痛めてるんだけど、友達が接骨院にいるから、診てもらって、セルフケアとかストレッチとか教わる。原因もみてもらって、内転筋(ふともも)が弱いらしいってのが分かったから、そこを鍛える。勤務地は山なので、なかなか愛媛には帰ってこれないから、自力でできるようにする。

 

こんな感じで、ポジティブに考えていくしかない、もはや。マイナスに考えたら、やめるしかない(笑)。逆に開き直る、体をケアする、鍛える。という生活を、今は送っています。

 

なめこ: へー。朝起きて、夜までずっとトレーニングするんですか?

 

まつ: 日によって違うかな。お客さんが来たときは、ボートに一緒に乗せてもらって、ベテランの先輩からいろいろ教わる。手取り足取り教えてもらえるわけではないので、自分で学ばなきゃいけない。動き方や、安全説明の仕方とか。とりあえず、お客さんがいるときはそれに同乗して、見て覚えて、盗んでる。

 


■ きっかけは、どうしようもないくらいたまたま

 

なめこ: なんでそんな所に行っちゃってるんですか?

 

まつ: 卒業する前に、お世話になった先輩や会いたい人に挨拶に行ってて、その中に、今の会社を紹介してくれた人がいました。先輩なんだけど、その人はフィリピンに留学して旅するんだーって言ってて、会う時は「来週出発なんだよね」みたいな感じで。

 

その先輩が結構おしゃれでね、アウトドアのファッションだった。で、俺も、アウトドア好きなんだよ。なんか楽じゃん、アウトドアファッション。アウターさえしっかりしてればおしゃれみたいな。で、あわよくば(先輩の服を)もらいたかったんだよね。世界を旅するって言ってたから、処分する服あるならちょっとくれないかなみたいな下心。

 

結局、服は全部売ってしまってたんだけど、そこからアウトドアの話をするようになって、今の会社を、「おもしろかったよ」って教えてくれた。社長もおもしろいらしくて、ラフティングって季節労働だから春~夏だけなんだけど、「それ以外の期間は何してるんですか」って聞いたら、「いや、分かんない」って言われたらしい。

 

なめこ: えっ(笑)

 

まつ: まあそんな感じで、その時は、先輩の経験談として話してもらったんだよね。けど、帰ったあと、ちょっとおもしろそうだなと思って。

 

なめこ: その時点ではまだ、まつさんにとって、「遊びに行くのが」おもしろそうだなあ、だったんですか?

 

まつ: うーんそう、生き方というか、人がおもしろいなと思った。なんとなくひっかかってて、そして仕事としておもしろそうかもって考え始めて。言ってしまえば、季節労働だからやれるかも?って思ったものもちょっとあったかも。

けど肝心の会社名を聞いてなくて、自分で調べてホームページ見たら、スタッフが皆おもしろい生き方してるなと思って。それで、ここ行ってみようと思いました。


長くなったけど、そういうきっかけです。先輩と会って、話して、たまたまだよ。

 

なめこ: へえ。

 

 

■ 山での生き方について:自然と共に生きるということ

 

なめこ: 暮らしはどんなんですか?

 

まつ: 田舎暮らしだね。今ね、建物に、断熱材をベースにいれてるんだけど、地元の60才とか70才のリタイアした大工のおじいちゃんと、うちの社長・スタッフが協力して、一緒にやってるんよ。基地はもうあるんだけど、そこに断熱材をいれてる。

 

なめこ: それはどういう…

 

まつ: シートみたいなのを貼り付けて、いわば大工作業だよ。DIY。大工さんと一緒にやるの。手作りすることが多い。基地もたぶん、最初は大工さんが見積もって、安くして、人と協力して作ったとかなんとか。そういうのいいよね。

 

なめこ: その、「就職」という枠で見た時に、まつさんは川に就職した人だと思ってるんですが、だってもはや「会社」じゃないじゃないですか。仕事場が川で、谷で、山ですよね。○○会社ですとか、商社ですとか、そういうのと違うように見えます。

それに、仕事内容だけじゃなくて、生き方・暮らし方も全然違う。大自然の中で生きてますよね。

 

まつ: それを求めてたのもあります。坂口恭平って人、知ってる? 3万円くらいで家を作るとか、そういう人。

 

なめこ: あー。いろいろ情報発信もしてる人ですよね?

 

まつ: うん、ツイッターもめっちゃやってる。本質を追求する生き方をしてる人。

 

なめこ: 自然と共生しつつ、哲学的に生きてるんですか?(適当に言ってる)

 

まつ: そんな感じ。それの影響受けてて、興味があったんだよね。それこそ、家つくれるじゃん。田舎って空き家がたくさんあるんだよね。スタッフの人が、空き家を使って、ゲストハウスをつくったり、そこに住んだりしてる。そういうのが当たり前になってます。

 

なめこ: 私、以前、日帰りアートツアーに参加して、広島に行ったんですよ。そこで見たのが、空き家再生プロジェクトというもので、空き家をDIYでゲストハウスにしたりとかしてました。

 

まつ: そう、まさにそんな感じ。

 

なめこ: 私が見た広島のゲストハウスは、DIYした人は漫画家だったので、どちらかというとホワイトカラーのイメージが強かったんです。職を持っている人が、都会から田舎に移住しました、そして家をつくりましたっていう感じで。でもまつさんの所は、それとは違う気がします。大自然の中で、大自然と共に生きてるじゃないですか。

 

まつ: うんー、俺の周りの人たちを見てると、生き方はおもしろいなーと思う。まず支出が無い。まあ田舎だから遊ぶとこが無いのもあるけれど。

あと、「遊び」の感覚も普通とは違ってて、カラオケとか飲みよりは、それこそラフティングとか釣りに興味がある人達がいます。

 

なめこ: なんか次元が違う気がする…

 

お金の入りどころは、まつさんの所も観光客が主だと思うので、収入源は「外から」の形になると思いますが、それ以外は、全てが同じ地域の中でまわっているじゃないですか。家建てるのも、暮らしも、食べ物も。

小さな輪の中で成り立ってしまうのって、すごいと思うんですよね。

 

まつ: たしかに、近くの人から野菜もらってきたりとかするなあ。何かに困ったら、あそこ行こう、あそこに頼もうというふうに、つながりがある。


俺、おじいちゃんおばあちゃんと接した経験がないんだよね。親が高齢で出産したのもあって、祖父母は早くに亡くなった。あと、ひとりっこだから、世代の感覚みたいなのも分かんない。つまり縦の関係が無かったんだよね。

 

でも今は、単純におもしろくて、嬉しい。会社もだけど、地域のおじいちゃんおばあちゃんが、ね。おじいちゃん下ネタばっか言うし、おばあちゃん、優しいし。

 

なめこ: さっき言ってた、60才のじいちゃん大工と一緒に作業するってやつですよね。遠い所から見ると、山の中で一体どう生きれるんだろうって思っちゃうんですよ。けど、下手したら、みんな知り合いだったりとか、小さく全部まわりますよね。すごいなあ。

 

まつ: 人と人のつながりじゃないけど、絆みたいなのは感じる。あったかい感じ。もっと住めば、嫌なところも見えてくるかもしれないけど。

 

なめこ: 絶対見えてくると思います。今は私たち、いいねいいねって言ってるけど、まだ知らないだけで。

 

まつ: 絶対マイナスもあると思うよ。協力はしあってるけどね。

 

 

 

▽続きはこちら:まつさんの就職活動の挫折をえぐります。

neimuko.hatenablog.jp